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大阪高等裁判所 昭和24年(を)861号 判決 1949年5月18日

被告人

有年田淸

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

前略

原審理の結果および当審における弁護人の釈明によると、被告人が本件後に犯した事件(以下別件と略称する)は、昭和二十三年中に起訴されたいわゆる旧法事件として新法事件たる本件とは別個に福知山簡易裁判所で審理の結果、昭和二十四年一月二十七日懲役二年の判決言渡を受けて控訴し京都地方裁判所に係属しその公判期日前であることが窺われ、かつ本件記録によると、原審第一回公判期日が同年二月二日であるところからみれば右別件第一審判決が一應本件を顧慮せずに量刑されたことも容易に想像し得るところがある。

およそ同一人に対する数個の犯罪は同一手続により一緖に審判するのが量刑の適切を期する上からは最も望ましいことにちがいないが、すでに両件が新旧法事件として別個に係属した爲、法律上併合審理が不能であり別個の手続で時を異にして審理された以上、同一手続における場合と異り両件各々の科刑としては一見妥当のようでも合算した刑期として観察すれば事件の内容次第では過重と認められる場合も起り得るであらう。さればとて事後審たる当審で別件事案内容の審査もせず、別件事実審の審判前において(別件事実審が刑を変更するかどうか本件科刑を斟酌するかどうかの判明しない現状において)本件の原審科刑当否判断に別件科刑事実を斟酌することは幾多の不合理を生じほとんど不可能にちかい。從つて本件量刑の妥当なりや否はもつぱら別件を除外した爾余の資料で判断するの外はないのであつて、以上の見地から所論の諸点を考慮し、記録にあらはれた各般の事実を精査してみると、原審の科刑は不当に重いとは考えられない。

被告人として当初別件取調にあたり本件犯行を述べておけば当然同一手続による審判を受けられ所論のごとき不利益な判決を受ける虞は避け得たと思はれるが、すでにことこゝに至つた以上、よろしく別件公判において這般の事情を詳述し過重量刑の回避を求めるの外はないのであつて論旨は畢竟理由なきに帰する。

よつて刑事訴訟法第三百九十六條に從い主文のとおり判決をする。

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